独占欲強めな副社長は、政略結婚で高嶺の花を娶りたい
「由莉奈。探したよ」
「海斗さん」
深いグレーの三つ揃いのスーツを身につけた海斗さんが颯爽と現れ、リチャードさんの代わりに私の肩を抱く。
そしてリチャードさんと海斗さんは、私では聞き逃しそうなくらい早い速度の英語で会話を始める。
〈リチャード。由莉奈は俺の大切な人だ〉
〈わかっていますよ。悪さはしていません。それにしても、ヒーローは登場が遅いですね〉
肩を竦め、リチャードさんは私にウィンクをする。
海斗さんはリチャードさんと並んでも引けを取らないくらいに背が高く、なによりふたりが並んでいると存在感というかオーラが凄まじい。
そんな長身の男性に囲まれて、早坂さんと彼は少しだけたじろいでいる。
それでも早坂さんは、攻撃の手を緩めない。
「染谷さんじゃないですか。営業のエースとはいえ、今日のパーティーには参加できないんじゃないですか? 場違いだと思いますけど」
今日のパーティーが村岡物産と染谷ケミカルホールディングスとの業務提携発表パーティーだというのは、極一部の人にしか知らない。
そして、海斗さんが染谷ケミカルホールディングスの次期社長だと気づいていない。