独占欲強めな副社長は、政略結婚で高嶺の花を娶りたい
ある一室に入ると、そこには数名の女性。そして部屋の脇にあるポールハンガーには見覚えのあるドレスが掛かっている。
「ほら、急いで。俺は部屋の外で待っているから」
もしかして、このドレスに着替えるというの?
「私、業務発表の方には参加しないのでは……」
もう村岡物産には、なにも関わっていない。だからこそ、裏方として少しでも、と。
「なにを言ってるんだ。社長の娘だろう? それに、俺をパーティーにひとりで参加させるつもりかい? それで女性に言い寄られていても、由莉奈は裏方に徹していられる?」
「それは……」
華やかで艶っぽい女性が海斗さんの周りを取り囲んでいる様が、容易に想像できる。だからって、私が海斗さんの隣に並んでいいわけでもない。
私の思考を読んだのか、海斗さんは言う。
「由莉奈は、俺の隣にいてくれるだけでいい」
迷う暇も、断る隙も与えてもらえず、控えていた女性たちが私を導き、椅子に座らせる。
そして、結んでいた髪は解かれ、もうひとりの人が化粧を施し始める。
「待っているから」
そう言い残し、海斗さんは部屋を出て行った。