独占欲強めな副社長は、政略結婚で高嶺の花を娶りたい
会場に入ると、大勢の人が集まっている。かき分けて進むわけにもいかず、扉から入ってすぐの壇上近くに立つ。もう間もなく式典が始まりそうだ。
社長である父が挨拶をし、壇上に数名が上がる。そして各々、手に紐を握る。紐の先は一枚の布に繋がっており、掛け声と共に一斉に引くと隠されたなにかが姿を現すのだろう。
「それでは、お披露目です!」
進行役の人の合図で、布が取り払われる。現れたのは、今回のパーティーの主旨が書かれた看板。
《村岡物産・染谷ケミカルホールディングス 業務提携 披露パーティー》
ワアッと歓声が上がり、拍手に包まれる。
順に染谷社長、それにリチャードさんも壇上に上がり、ひと言ずつ挨拶をしていく。
挨拶が済むと父と染谷社長は、がっちりと握手を交わしている。
良かった。式典は無事に終えられそうだ。この後は立食パーティーに移るはず。早く着物に着替えなくちゃ。
そっとその場から立ち去ろうというところで染谷社長が、再びマイクを持った。
話の途中で退室するのも失礼だと思い、迷っていると、マイクを通して想像していなかった報告を聞く。