独占欲強めな副社長は、政略結婚で高嶺の花を娶りたい
「婚約者を紹介します。由莉奈、こちらへ」
甘く名前を呼ばれ、声を詰まらせる。会場中の視線がこちらを向いて、その場に立っているのがやっとだ。
ゆっくりと壇上から私の元に歩み寄る海斗さんは、私の手を引いて壇上へと誘う。私の手をつかんだ瞬間に、会場は割れんばかりの拍手が起こる。
向けられるライトの光に目が眩みそうで、自分でもどうやって歩いているのかさえわからない。
海斗さんは再びマイクを手にし、「公私共に責任ある立場に就き、業務提携を行った村岡物産と染谷ケミカルホールディングスの更なる発展に貢献していきます」と宣言し、拍手喝采を浴びる。
私は、ただただ海斗さんの隣にいた。