独占欲強めな副社長は、政略結婚で高嶺の花を娶りたい
立食パーティーでの和菓子の紹介は大盛況のうちに幕を閉じた。
片付けなども全てが滞りなく終わると、川瀬の人たちや関わってくれた人たちは打ち上げをしに行こうかと盛り上がっている。
するとどこからともなく現れた海斗さんが私の手を引いて、その場にいる人たちに会釈する。
「由莉奈はすみません。根を詰めていたのを知っているので、今日は休ませます」
〈やれやれ。早くふたりきりになりたいための、言い訳ですね〉
リチャードさんがぼそりと呟く。英語なのはどうにか救いだ。理解しているのは数名。
ただ、リチャードさんの呟きがわかっていない人たちも、どこか生温かい眼差しで私たちを送り出す。
「由莉奈ちゃんは一番の功労者だもの。よく休んでね。明日はお休みでいいって、店長も言っていたわ」
浅見さんに『よく休んで』と言われ、素直に頭を下げる。
「今日はありがとうございました。みなさんのお陰で、無事に和菓子を広める催し物を終えられました。お言葉に甘えて、先に帰らせていただきます。みなさんはこの後も楽しんでください」
荷物を持ち、着替えをしてから帰ろうと控え室に寄る手前で父、それから染谷社長と鉢合わせた。
軽い挨拶を交わしただけで「由莉奈は着替えておいで」と送り出される。
失礼ではないかしらと思いつつ、控え室に向かった。