独占欲強めな副社長は、政略結婚で高嶺の花を娶りたい
「私、心に決めた人がいますから」
きっぱりと言い切ると、眉を上げ口汚く罵る。
「ずいぶん尻軽だよな。婚約破棄して、そう経たないうちに、別の男と婚約だなんて」
この人に言われる筋合いはない。そもそも婚約中に不貞行為をしたのは、この人だ。
後退りし続け、背中が壁に当たる。もう逃げられない。ニヤリと気味の悪い笑みを浮かべ、肩を掴まれる。
「イヤッ」
「そう言うなよ。社長の娘だからな。酷くはしない。あの男では嫌だと、俺を忘れられなかったって言えば、もう一度婚約してやるよ」
覆い被さられそうになり、勇気を振り絞る。私はもう、誰かの言いなりにはなりたくない。
両目をつぶり、思い切って足を振り上げる。
「ウッ」と短い声を発し、体を丸める彼から離れようとしたのに、非情にも手を掴まれてしまう。
「いい気になるなよ」
凄まじい形相で睨まれ、足はカタカタと震え出す。