独占欲強めな副社長は、政略結婚で高嶺の花を娶りたい

「俺はなにもしていない。懐かしい同僚に話しかけただけだ」

 平然と言う彼に、私は怒りさえも湧いてこない。

「監視カメラがあると考えもしないのか。浅はかな男だ。身の程を知れ」

 目を見開き、焦った様子で周囲を確認する彼の姿は滑稽だ。

「お前に由莉奈はもったいない。由莉奈自身を見られるような男でなければ、由莉奈を幸せには出来ない」

「あんただって、由莉奈の後ろ盾を利用しただけだろう? 会社同士の政略結婚じゃないか」

 彼に下の名前を呼ばれると、ぞわりと不快感が這い上がる。

「二度とその卑しい口で、由莉奈の名を呼ぶな」

 凄みの効いた声に怯んだのか、おずおずと退散していく。
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