独占欲強めな副社長は、政略結婚で高嶺の花を娶りたい
「反撃?」
「ええ。向かい合って近づいて来たので、思いっきり足を上に蹴り上げました」
きっと今までの私なら泣いて座り込んでしまっていた。海斗さん以外の人に触れられたくないという強い想いと、弱い私から脱却するんだという気持ちが体を動かしたのだと思う。
一瞬の沈黙の後、「ハハッ」と笑う。
「頼もしいけれど、やられた相手は逆上するかもしれない」
「はい。体を丸めた彼に、腕を掴まれました」
眉をひそめ、手首を優しく持ち上げる。
「もう少し安全な方法を、習得してもらおう」
そう言って、持ち上げた手首に口づけを落とす。
「無事で良かった。ほかに触られたところは?」
「肩を掴まれましたけど、あのっ、海斗さん。肩は、大丈夫です」
色香漂う海斗さんに見つめられ、身を縮める。
そっと肩に唇が触れ、もう一度抱きしめられる。
震えていた体は甘やかす海斗さんに包まれ、正常を取り戻す。正常よりも少しだけ、上気しているかもしれないけれど。
「タクシーを呼んだから」
促され、出口へと向かう。