独占欲強めな副社長は、政略結婚で高嶺の花を娶りたい
式典から始まりパーティーに、それからひと悶着。マンションに着いてやっと息をつける思いだ。長かった1日をようやく終えられる。
入浴を済ませ、ふたりでソファに腰を下ろす。久しぶりのゆったりとした時間。
そこで私は思い切って、パーティーのときに疑問に思った心の引っ掛かりを打ち明ける。今までのように勝手に解釈をして、すれ違いたくない。
「わたしたちの将来については、返事は急がないって、おっしゃられていませんでしたか?」
どちらかといえば文句をぶつけているのに、海斗さんは表情を緩ませる。
「良かった。なにも言ってくれないから、由莉奈の中で無かったことにされているのかと思ったよ」
「それは、あのときは落ち着いて聞ける心境ではなかったというか」
突然、式典の方にも参加させられ、参加どころか婚約者と紹介され壇上にまで上がった。思い返すと、よく無事に立っていられたと感心さえする。あの場で倒れてもおかしくない。
「由莉奈の気持ちは待つよ。ただ、ほかの男には牽制しておかないと」
牽制なんて可愛いものじゃない。それなのに、飄々と海斗さんは付け加えるように言う。
「それとも、由莉奈は俺と婚約したくなかった?」
「そうじゃありませんけど……」
このパーティーが終わったら気持ちを伝えようと思っていたのに、先回りされ戸惑っている。