独占欲強めな副社長は、政略結婚で高嶺の花を娶りたい

「クラブリゾート石垣島です」

「え?」

 海斗さんがホテル名を言えって言ったくせに、目を丸くしている。

「騙されたからってわけじゃないですよ? 海斗さんは、信用に足りる人だと思ったからです」

 どこの誰だか知らないわけではない。それに、海斗さんはわざわざ私みたいな小娘を騙したりしないだろう。

「それは喜んでいいのか、男としては微妙だな」

「え? それは、どういう……」

 海斗さんの顔を見つめても、答えはわからない。信用されない方が、いいってこと?

「俺は石垣ビーチリゾートに宿泊している。なにかあれば『宿泊している染谷海斗』と呼び出してくれ。それから、これも」

 店員の人にメモ用紙とペンを借り、なにかをサラサラと書いて私に渡す。

「俺の連絡先。困ったら連絡して。出来るだけ飛んでいくから」

「ふふ。スーパーマンみたい」

「由莉奈ちゃんのスーパーマンになれるのなら、喜んで立候補するよ」

 海斗さんの行動ひとつひとつが、誠実な人なのだと物語っている。

 海斗さんにしてみたら、旅先で会ったどこの誰だかわからない小娘にフルネームと連絡先まで教えて。その上、電話番号はメモに書いて渡す徹底ぶり。

 こちらの連絡先は、無理に教えなくてもいいという配慮を感じた。
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