独占欲強めな副社長は、政略結婚で高嶺の花を娶りたい

 シュノーケリングのやり方や注意点を聞き、いざ海の中へ。

「わあ。冷やっとしますね。でも気持ちいい」

「ほら。顔をつけてみて、手を握っていてあげる」

 自然に両手を捕まえられ、ドキドキと鼓動が速まる。海斗さんにときめき過ぎたせいで溺れたら、助けてくれるかしら。

 なんとも締まりのない感想を浮かべつつ、恐る恐る顔をつける。するとまだ足のつく場所なのに、すぐ近くにカラフルな小魚が見える。

「すご! ゴホゴホ。すごいです!」

 感激をして顔を完全に上げ切る前に喋り出したせいで、水を少し飲んでしまった。

「そんなに興奮しなくても魚は逃げていかないから、ゆっくり、ね?」

 優しく窘められて恥ずかしい。感動してもはしゃぎ過ぎないように気をつけなくちゃ。

 もう一度顔をつけると、今度は手を引いてくれて、泳ぐ真似をしてみる。自分ひとりで泳いでいるわけではないけれど、魚になったみたいな不思議な気持ち。

 目の前には青い世界が広がり、サンゴ礁の間を鮮やかな魚が泳ぐ。
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