独占欲強めな副社長は、政略結婚で高嶺の花を娶りたい
搭乗手続きを済ませ、時間になると機内へ。座席の背もたれの部分には、沖縄らしい布地がかけてある。
「わあ。素敵」
これだけの演出で旅行気分が高まり、気分も上向いてくる。
今まで親の意見に従ってきた私は、ひとり旅に行かせてほしいと頼み込んだ。これは初めての反抗……とまでは言えない程度だけれど、私にしては思い切った行動。
新婚旅行に行く予定だった今日。何食わぬ顔で、彼は浮気相手とモルディブに行く。
そんな日に、家でもやもやしていたくなかった。
「琉球びんがたという染め柄だよ」
後ろから声をかけられ肩を揺らし、振り向いて今度は息を詰まらせる。
どうして……。
私の後ろに立っていたのは、染谷海斗。私が密かに憧れていた人。
遠い存在過ぎて、染谷さんとどうこうなりたかったなんて恐れ多い想いを抱いたことはない。私だけでなく、染谷さんに憧れていない人は皆無なのでは、というくらいにみんなの憧れの的なのだ。
身長は180センチを優に超えていて、小顔だから余計にスマートに見える。爽やかな短めの髪は横に流していて、時折手でかき上げる姿は様になる。
黒髪の下に覗く切れ長の目、すっと通った鼻梁。薄い唇は柔らかな笑みを浮かべていて。