独占欲強めな副社長は、政略結婚で高嶺の花を娶りたい
「石垣島へは初めて?」
隣同士で座ると、気さくに話しかけてくる染谷さん。仕事も営業だし、初対面(厳密には違うのだけれど)の人とも分け隔てなく話せるんだなあと感心する。
「えっと、沖縄は初めです」
「そう。この便は沖縄本島ではなく、石垣島行きだよ。間違えては、ないよね?」
「え、ええ。はい。ダイジョウブです」
若干、カタコトになりながら返答する。少し話しただけで、慣れていない上に無知なのもバレバレ。
「心配だな。きみみたいな可愛い子が。ひとり旅、だよね? 向こうに友達がいるとか?」
「いえ。ひとりを満喫しようと思って」
胸を張って答えてから、しまったと気付いても遅かった。『可愛い子』なんて言ってもらえていい気になって。ひとり旅だなんて、言わない方がいいに決まっているのに。
「そう。気を付けてね。俺みたいな悪い男はいくらでもいるんだから」
染谷さんが悪い男だなんて! でも、染谷さんになら騙されたって本望だ。そんなこと口に出して言えないけれど。