独占欲強めな副社長は、政略結婚で高嶺の花を娶りたい
「えっと、きみ名前は? 短いフライトの間でも、『きみ』では、ちょっとね」
「私ですか? 私は……由莉奈です」
ここでも名字を告げるのは憚られ、名前だけを口にする。
すると染谷さんは目尻を下げて「由莉奈ちゃんか。すごく似合っているね」と褒めてくれる。
わあ。この笑顔を独り占めなんて贅沢!
「俺は海斗だよ」
「海斗、さん」
「うん。海に北斗七星の斗で、海斗。だからなのか、海が好きなんだ。それで石垣島にもよく行くよ」
彼が染谷さんとは知らないと思われているのだから、『海斗さん』と呼ぶしかない。
旅の思い出にひと時の間だけでも、『由莉奈ちゃん』『海斗さん』と呼び合ってもバチは当たらないだろう。
これはきっと、神様がくれたご褒美。