独占欲強めな副社長は、政略結婚で高嶺の花を娶りたい
そのときの無念さが忘れられず、チャンスはなんとしても逃すまいと、肩肘を張っていたかもしれない。
旅先で助け、吊り橋効果的なものを期待しなかったわけじゃない。
それでも旅行中の初心な態度を見ていて、まさか由莉奈の方からあんなに可愛いお願いをされるとは思ってもみなかった。
葛藤はあった。純粋無垢な由莉奈を騙す行為になる。全てを話してから関係を持つべきだ。
頭の中ではそう警笛が響いていたが、抑えられなかった。
石垣島での一夜を思い出しながら、傍らで眠る由莉奈の髪を撫でる。栗毛の髪は柔らかく、ずっと触れていたくなる。
頬を撫でれば、くすぐったそうに顔を動かし、俺の手を枕にして再び深い眠りにつく。
「なんだよ。この可愛い生き物は」
柔らかな頬の下に敷かれ、身悶える。
背が低いからだろうか。ふわふわの栗毛のせいだろうか。なにがそんなにも心惹かれるのかわからない。
ただ、由莉奈ならば申し分ない教養と家柄を兼ね備えている。生まれ持った嗅覚なのか、自然に自分が必要とする女性に惹かれるようになっているのだと、妙に納得をする。