独占欲強めな副社長は、政略結婚で高嶺の花を娶りたい
名前も知らないまま惹かれ、その女性が社長令嬢だった事実。それを運命と思ってなにが悪い。
それでもやはり順番が重要だったのは、なにも体の話だけではなかったのは言うまでもなく。
いくら待っても連絡はこなかった。
運命と思っていたのは、自分だけだったのか。肌を重ねたときは、確かに気持ちまで通じ合ったつもりでいた。それは、幻想だったのか。
今は笑顔さえも見せない由莉奈。
石垣島で見せた、コロコロ変わる表情。俺を信頼し切り、身を委ねる健気さ。
なにより、会社でしか知らなかった由莉奈とは違う、素の由莉奈と冗談を言い合い笑い合う時間はかけがえのないものだった。
そして真っ直ぐに向けられる俺への好意を、あのときは感じられ離し難くて。
「ん。海斗さん……」
夢を見ているのだろう。寝言を言いながら擦り寄ってくる。
「ったく。現実でもそのくらい素直に甘えてくれよ」
ふんわりと香る俺と同じシャンプーの香りに、由莉奈の甘い匂いが混ざって胸を疼かせる。
由莉奈を抱き留め、腕を回す。今俺たちを繋ぐのは、由莉奈のお腹にいるであろうふたりの子ども。
こんなにも小さな体に、新しい命が宿っている神秘を感じながら、いつしか眠りについていた。