独占欲強めな副社長は、政略結婚で高嶺の花を娶りたい

 仕事を終え、恐る恐るマンションへと帰宅する。メモ書きを残したとはいえ、無断でいなくなりご立腹ではなかろうかと戦々恐々とする。

 鍵の使い方は教わったため、なんなく開錠できてしまうのを恨めしく思いつつ、インターフォンを押すのも違うような気がして、なんとなく忍び足で上がる。

 そして意を決し、リビングの扉をそっと開ける。

「ただいま、戻りました」

 するとキッチンに立っている海斗さんに極上の笑みを向けられ、よろめきそうになる。

「ああ、お帰り」

 神々しささえ感じる。エプロンまでも似合うなんて、どこに視線を向ければいいのかわからない。

「食欲はある? 普通に食べられる?」

「普通、とは」

「つわり。始まるとつらいらしいから」

 当たり前のように話す海斗さんの声が、遠くに聞こえる。

「聞いている?」

「あ、はい」

「つわりが始まると作れないと思うから、料理は俺がしよう。なにか好き嫌いはある?」

 お願い。優しくなんて、しないで。
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