独占欲強めな副社長は、政略結婚で高嶺の花を娶りたい

「今の体調は?」

 質問を向けながら、いつの間にか近づいていた海斗さんに髪に手を差し入れられ体を揺らす。動揺を悟られたくなくて、平静を装って返答する。

「好き嫌いはありませんし、体調はすこぶるいいです。仕事もしてきましたし」

「そうか。『自分の好きな分野で見つけたい』と言っていたね」

 そんな些細な会話さえも、覚えているなんて……。胸が高鳴って抑えられない。

「はい。和菓子が好きで」

「和菓子? もしかして和菓子職人?」

 怪訝な声色に、高鳴りは急激に収まっていく。

 ああ、この人は『和菓子なんて』と言う人なのかな。世間体を気にして『俺の妻になる女性には、相応しい職業についてほしい』と言うのかな。

 正解を知るのが怖くなって、けれど幻滅するためにここにいるのだから願ってもない状況だと自分に言い聞かせる。

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