独占欲強めな副社長は、政略結婚で高嶺の花を娶りたい
「いけませんか? 私は和菓子に携わり、食べてくれる人の笑顔を……」
肩を掴まれ、言葉を失う。肩に置かれた手は、痛いほどに力がこもっている。
「何故だ。どうしてよりによって、そのような仕事を」
身構えていたのに、実際に言われると胸が苦しくて鼻の奥がツンとする。
海斗さんは、海斗さんなら、わかってくれると思っていた。少なくとも、再会するまでの彼ならば。
努めて冷静に対応しようと、酷く冷淡な声が出る。
「あなたには関係ありません。私がどんな仕事に就こうと……」
最後まで言い終わる前に、グッと顎が持ち上げられ、無理矢理に視線を絡ませられる。恐ろしい眼差しに見据えられ、ゴクリと喉が鳴る。
そして、私以上に冷酷な声で告げる。
「子どもは俺の子でもある。無関係とは言わせない」
「なにを……」
ふたりの間に赤ちゃんが出来たら、海斗さんの思い通りに生きなきゃいけないの?
こんなの、父の敷いたレールから降りれたとしても、ただ人が変わるだけ。父が海斗さんになるだけで、私の自由はなにもない。
「放っておいてください。海斗さんには関係ない!」
声に苛立ちが混じり大きくなる。わかっていても抑えられない。
「俺の子でもあるんだ。放っておけるわけないだろう?」
どこまでも平行線の話し合いに、なにもかもが嫌になる。