独占欲強めな副社長は、政略結婚で高嶺の花を娶りたい
「……していません」
「なにが? 仕事?」
まだ棘のある声に、首を横に振る。
「妊娠」
空気が凍ったのがわかった。冷ややかな空気の中で、柔らかくならない口調を聞き続ける。
「どうして、それを黙っていたんだ」
責める口調で言われ、キュッと唇を引き結ぶ。
「きみの今までの態度からして、嘘をついてまで『染谷ケミカルホールディングスの御曹司』の俺と結婚したいようには思えない」
そんなこと微塵も思っていない。どれだけ海斗さんが普通の男性なら良かったのにと、思っただろう。
けれどそうであったのなら、出会いからなにもかもがなかった。
なにも言えず、黙っていると海斗さんも無言で距離を詰めてくる。ただならぬ威圧感に後退りし続け、とうとう背後は壁。逃げ場はない。
身長差のせいもあり、覆い被さるように海斗さんから見下ろされる。それはなんの感情も乗っていない、冷めた顔つき。
「妊娠していないのなら、抱いても構わないよな。そのつもりで、ここにいるんだろ?」