独占欲強めな副社長は、政略結婚で高嶺の花を娶りたい

 楽しくお喋りをしていると、すぐに石垣島に着いてしまった。夢の時間は終わりだ。

「とても楽しく過ごせました。ありがとうございます」

「俺も楽しかったよ。島内でも見かけたら気軽に声をかけて」

「それじゃ」と空港で別れ、私は「ヨシ!」と、奮起する。ひとり旅を満喫するんだと荷物を脇に置き、鼻息荒くパンフレットを開いた。

 パンフレットというよりも、もはや薄い地図一枚。それにあれこれ書き込んで、これだけ見れば済むようにした自分なりの自信作だ。

「えっと、まずはタクシーかな。タクシー乗り場は……っと」

 最初の行動を確認し、スーツケースを転がしながら、片手で地図を確認しつつ歩く。

 空港の外に出ると、思いの外暖かい。というより暑いかも! 上着を脱いで旅行鞄に詰め込む。

 良かった。寒い沖縄じゃ、気分も落ち込みそうだもの。あ、沖縄というよりも、石垣島か。

 服装も正し、もう一度パンフレットに目を向けたとき、凄まじい風に吹かれた。あっと思う間もなく、パンフレットは風に舞い上がる。

「キャッ。あ、ダメ。パンフレットがなきゃ」
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