独占欲強めな副社長は、政略結婚で高嶺の花を娶りたい
「すみません」
カタコトの日本語が聞こえ、振り返ると今まさに思い浮かべていた男性が入り口に立っていた。
肩幅が広く、大きな傘からもはみ出していたのだろう。肩から腕にかけて濡れている。
雨の日に用意しているタオルを手に〈よろしければ、お使いください〉と差し出す。
〈ありがとう。さすが『おもてなし』の国ですね〉
お店どころか日本を褒められ、嬉しく思う。和菓子とともに日本を好きになってくれたら、これほど喜ばしいことはない。
〈迷っていましたが、今確信しました〉
〈なにをですか?〉
晴れやかな表情をする男性に、こちらも心が明るくなって話を先へと促す。
〈仕事で大きな茶会を開く予定があります。そこで出す和菓子を『川瀬』に頼むべきだと〉
話の方向が急に変わって驚きつつも、『川瀬』の和菓子を気に入ってくれたのだと思い、心が弾む。
〈ありがとうございます! 大きな、というとどの程度でしょうか。たくさんのご注文となりますと、職人と相談の上……〉
〈茶会に、あなたを派遣してもらうことはできますか?〉
至極真面目な顔をして言うものだから、一瞬、英単語がわからなくなったのかと錯覚する。
派遣って、和菓子を納品するときに通訳として付き添ってほしいとか、そういう?