独占欲強めな副社長は、政略結婚で高嶺の花を娶りたい

 落胆が顔に出ていたみたいで、励まされる。

「認められたい人がいるんだったね」

 翼さんには、ここを受ける際に面接で意気込みなどを話している。その話をされると恥ずかしい気持ちと、それに加えて今は少しだけ寂しくなる。

「認められたいというか、その人に誇れる自分でいたくて」

「せっかく大口の仕事を契約した!ってわかりやすい手柄だったのにね」

「そんな。恐れ多いです。翼さんが作る和菓子が、繊細で美しいから。そして食べていただいて、味も絶品だったからこそです」

 翼さんは苦笑して「褒め過ぎ」と謙遜する。

 本当のことだ。私も翼さんの作る和菓子に、魅力されたひとりだから。
 ただ私は話しかけてお勧めしただけ。それでも買ってもらえたときは、誇らしかったのは確かだ。

 そこから話が大きくなって、とても自分の力で大口契約を取った!だなんて思えない。

「浅見さんから聞いたよ。タオルを渡したときにも、感激しているのが身振りで伝わってきたって。雨の日のタオルは、由莉奈ちゃん発案でしょう?」

 それだって、近くのカフェに入ったときに『雨に濡れた方は、ご自由にお使いください』と置いてあったのを見て、素敵だなって真似をしただけ。
 
 レジ近くに置いてあり、誰かがそのタオルを使うとその人が席についてから、新しいタオルに替えていて、その心配りが素晴らしいと思った。
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