独占欲強めな副社長は、政略結婚で高嶺の花を娶りたい

 背が高い翼さんを優に超える海斗さんは、見下ろすような構図で質問をする。

 整った顔立ちに表情がなにもないとすごく恐ろしいと、つい先日体感したばかり。そのときと変わらない顔つきで、翼さんに詰め寄るみたいな口ぶり。

 不遜な態度に翼さんは眉をひそめ、怪訝な表情を浮かべる。

「失礼ですが、あなたは?」

「由莉奈の婚約者です」

 迷いなく告げる声に息を飲む。

 私の戸惑いを感じ取った翼さんは、語尾を強める。

「由莉奈ちゃんは、そう思っていないようですが?」

 僅かに眉を上げた海斗さんがなにか言う前に、慌てて口を挟む。

「あの、大丈夫です。翼さん。大丈夫ですから。私、帰りますね」

 入り口まで足早に歩み寄り、海斗さんの背中を押す。

「本当に大丈夫?」

 小声で私を気遣う翼さんに頷いてみせて、海斗さんと外に出ると、お店から離れるように歩き出した。
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