独占欲強めな副社長は、政略結婚で高嶺の花を娶りたい

 テーブルにはトマトのパスタに、スペアリブ、彩り豊かなサラダが並べられる。

「食べよう」

 先に食べ始めた海斗さんが、一向に動き出さない私に「どうしたの?」と、不思議そうに聞く。

「スペアリブを食べるときでさえ、海斗さんは気品にあふれていて、嫌になっていたところです」

 スペアリブだなんて、マナー的に上級者向けの食べ物だ。どうするのだろうと思って観察していたら、フォークとナイフでなんなく食べ進めてしまう。

 見惚れるほど、美しい所作で。

「ああ、俺も女性との食事にはどうかなと思ったけれど、由莉奈なら華麗に食べてくれると期待しているよ」

 意地悪な声色で言われ、ますます食べづらくなる。

 そうよ。ここは豪快に手で持ってかぶりつけば、ガッカリさせられるでは?

 そこまで考えたものの、マナーに厳しかった父に恥をかかせる行為も、なにより自分の自尊心が許さなくて、ナイフとフォークを手にする。

「フフッ」と小さく笑われて、どことなく居心地が悪い。

 しばらく食べ進めてから、おもむろに話し始める。その話の始まりは、想像していたどれとも違っていた。
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