独占欲強めな副社長は、政略結婚で高嶺の花を娶りたい
「社長は……由莉奈のお父さんは、鼻持ちならなかったのだろうね。傘下に入れる企業をよく知るため偵察に訪れた若造に、娘をやるだなんて」
「え……。父こそがこの縁談に乗り気なのでは……」
面食らっていると「そうだよな。そう考えるのが普通だ」と笑う。そこから、海斗さんの仕事内容を掻い摘んで教わる。
「俺は毎回、染谷ケミカルホールディングスの傘下に入る候補が持ち上がるとその会社に赴き、良さそうであれば一定期間働いている。名前は伏せる場合もあれば、伏せない場合もある」
ここに来て、やっと村岡物産で働いている謎が解けた。そして、ある意味では想像の範疇を超えない話もされる。
「そしてその度に、そこの会社に娘さんがいれば縁談を勧められた。それはそうだよね。傘下に入る企業もホールディングの社長になる男に嫁がせられれば、自身の会社も娘も将来安泰だと思うだろう」
海斗さんも自分と変わらない道を歩んできたのだと思うと、急に親近感を感じる。
「かしこまった席で娘を紹介されるのは毎度のことで、わかりやすくギラギラした目で見られ、捕獲者に睨まれた獲物みたいな気分だよね」
「海斗さん、そんなに可愛らしい方じゃありませんよね?」
「ひどいな」
肩を竦めてみせられ、少しだけ緊張が解れたように思う。