ねえ、私を見て
仕事は着々と進んで行って、あっという間に終了の時間を迎えた。

「澤田さん。」

日奈人君からの呼びかけに、体がビクッとなる。

「なに?」

「お疲れ様でした。」

「お疲れ……」

そして彼がメモを見せている事に気づいた。

【メール下さい.】

そんな短いメモ。

もしかしたら、飲みに誘われるのかもしれない。

私はそのメモを見ない振りをした。

すると日奈人君は、そのメモを私のデスクの上に置いて行く。

その丁寧な字。

それだけで、見惚れてしまう。

「相馬君、次はいつだっけ。」

園子が気を利かせてくれた。

「明後日です。」

「そう、お疲れ様。」

「お疲れ様です。」

オフィスから日奈人君の姿が無くなると、人知れずため息をついた。

園子に知られないように、あのメモはゴミ箱に捨てた。
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