ねえ、私を見て
日奈人君が私を待っている。

高鳴る鼓動が、私を改札から離れさせた。

【行かない。用事があるって言ったでしょう?】

【終わったら、来て下さい。】

トクントクンと全身に血が巡る。

日奈人君のところへ行きたい。

でも行ってしまったら、どんどん日奈人君に、はまってしまう。

私は、切り札を出した。

【もう、会わないようにしよう。】

返事は来ない。

そう、これで終わったんだ。

そう思って、改札に改めて向かおうとした時だ。

【嫌だ。別れるなんて嫌だ。】

日奈人君からの返事に、胸が熱くなった。

夫との間には、別れる別れないの話なんて、なかった。

だから、こんなに情熱的な言葉、言われた事がない。

【私達、不倫なんだよ。バレたら困るわ。】

【バレなきゃ、いいんでしょ。俺は、嫌だよ。くららさんと一緒にいたい。】
< 55 / 147 >

この作品をシェア

pagetop