ねえ、私を見て
夫にもこんなに乞われた事はない。

涙が溢れてきた。

【ねえ、来てよ。くららさん。】

私はスマホをバッグの中に入れて、またオフィスのある駅裏に向かった。

確かこの前行ったお店は、駅よりもっと離れた場所だったと思う。

私は再び、スマホを出した。

【日奈人君、どこ?】

返事は直ぐに返ってきた。

【この前行ったお店の前にいる。】

私はそのお店まで走った。

早く会いたい。

日奈人君に会いたい。

店に向かう路地を曲がったところで、日奈人君を見つけた。

「日奈人君!」

気が付いた日奈人君は、手を大きく振ってた。

私ははぁはぁと息を切らしながら、日奈人君の前に立った。

その瞬間だった。

日奈人君に抱き締められたのは。

「くららさん、来てくれて嬉しい。」
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