ねえ、私を見て
私も言いたかった。

日奈人君に会えて嬉しいって。

「中、入ろうか。」

「うん。」

日奈人君の腕が、私の腰に周る。

大切にされているんだって、分かる。

私達は、カウンターの席に座った。

「何飲む?」

「ビールかな。」

さっきまで会わないって、決意していたのが嘘みたい。

頼んだビールがきて、二人で乾杯した。

「何で急に、会いに来てくれたの?」

日奈人君に聞かれ、私はほろ酔い気分で答えた。

「……会いたくなったからかな。」

すると日奈人君は、私に顔を近づけた。

「ありがとう。」

耳元に日奈人君の吐息がかかる。

くすぐったくて、思わずニヤけてしまう。

こんな事、何年振りだろう。

ああ、新婚当時からやっていないから、3年振りか。

まだ大学生の子にこんな事されるなんて、私もまだ捨てたものじゃないよね。
< 57 / 147 >

この作品をシェア

pagetop