ねえ、私を見て
そして飲み終わった後、お店を出て、私達は立ち止まった。

「もっと、一緒にいたいなぁ。」

日奈人君が何気に言った。

「ホテルに行く?」

何の気兼ねもなく、サラッと言えた。

私の中で、何かが外れたのだ。

日奈人君は私の手を繋ぐと、ホテル街へと足を向けた。

「なんか、くららさん。変ったね。」

「そう?」

「前は、ホテルに誘うのは、俺からだったから。」

そうだ。

私は日奈人君から誘われない限りは、ホテルに行かなかった。

既婚者だという咎があったのかもしれない。

「着いたよ。」

フロントで鍵を預かって、私達は部屋へと向かった。

エレベーターに乗ったところで、他のお客様とばったり会った。

私達をジロジロと見てくる。

思わず日奈人君から一歩横にずれた。
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