双子の異世界・奇跡の花束
ミネルアは小さく深呼吸をして、レシオンの方に顔をむけた。

綺麗に膝を折って前に座る。


「レシオン皇子、ありがとうございます。嬉しいです。でも・・行けません」


「ミネルア・・」


「私、ここで待ってる人がいるんです。だから・・貴方とは行けません」


そう言われ辺りを見回す。


「・・・そういえばあいつがいないな」



あいつとはもちろんヴォルスの事だ。



「はい。旅に出たそうなんですけど、いつ戻ってくるかわからないし・・待っていないと」


にこっと優しい笑顔でミネルアは答える。


「だから・・申し訳ないのですけど」


「・・そう、か」



レシオンは一度苦虫を噛んだ様な辛い表情で俯いて、立ち上がった。


「わかった。だが、昨日のハンカチの礼はさせてくれ」


「あ・・」


「昨日返そうと思ったんだが、娘想いのいい父がやってきてしまったから」


ぎくん。


「俺の事だなそれは」


「ええ」

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