双子の異世界・奇跡の花束
「ここは確か、デルファンの王族の墓標だって聞いてるけど」


「・・・そうだけど」


「先の大戦争で家族を失ったのか?」


「ああ・・そうです」




だから祈りを捧げていた。

ミネルアを帰してあげたいと。

男はフレンドリーに笑っている。空笑いに見えるが。


「奇遇だな。俺もだよ」


「え・・?」


「ハハ。ちょっと色々あって時間軸がおかしいんだけどな。俺の親は大戦争で死んでる」



確かに変だ。

男は見た目35歳くらい。

大戦争は男が生まれるだいぶ前の話だ。

ヴォルスの家族は戦争のだいぶ後に殺された。

王族の生き残りとしてルアードに囚われ、殺されたのだ。

男は崖から海を見下ろした。


「俺の親は死ななくても良かったハズだ。お前の親もな」



ヴォルスの事など何も知らないハズなのに不思議と声に説得力があった。

しかしこの男は知り合いでもない。

ヴォルスは不信感が否めず後ずさる。



_この男一体・・・



「でも今はそんなことよりも・・大事な事がある」


「?」




潮風が二人を吹きぬける。

崖の下で海が荒ぶる。



「この世界で大切な人を探している」




ヴォルスが出会ったのは、ミネルアを探し続けているゼノだった。
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