双子の異世界・奇跡の花束
「ど、どういうことですか。賢者様、私の父は死んだのでは・・」


「まあ、死んだも同然だったからな」


「・・・」


フレアはゼノを瞬きせず凝視する。

どう見ても自分よりも年下に見えるだろう。不思議な感覚がフレアを襲う。

ゼノはワザと目を伏せるように視界から遠ざける。

賢者はにっこりと笑っている。


「あの戦争から60年くらい経つかな」


「そうですね。多少時間の軸が違うかも知れませんが」


「先の大戦争で、膨大なマナの力によって時空の歪みが生じた。ゼノ君は死にかけた母親を追って自殺行為で時空の歪みに飛び込んだんだよ」


「ゼノ・・・・」


自殺行為。

その言葉が皆の脳内を支配した。

ミネルアは言葉を失った。



「母親を追って異世界へ旅立ったんだ。どうなるかわからない歪みに」


「まあ、昔の話です・・」


「その姿はあちらの世界の人間のものだね」


「はい。落ちた後、5歳の子供になっていました」


「そこから成長し今に至るわけだ。今回は5歳になっていなくて良かったなぁ。ふふふ」

「ええ。不幸中の幸いです」


とゼノは頷く。

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