双子の異世界・奇跡の花束
手を差し伸べられ道を歩く。

少年の服から微かに漂う優しい花の香りがミネルアにとって束の間の安らぎだった。

とても街の少年には見えない。服装も白に金の模様が入った豪華なコートを羽織っていた。
ジッと見つめていると少年が言った。

「俺も迷子なんだ」


「え・・・」


ミネルアは驚いて止まった。


「ぷ、ハハ・・驚くよな~。でも、初めて来た街だったら迷子になるよ。広いし」


「う、うん・・私も初めて」


何もかも初めての世界だ。


「そっか!あ、俺はレシオン。迷子同士仲良くしよう」


「・・クス・・フフ」



何故迷子なのにこんなに元気で明るいのだろう。

むしろ楽しんでいる様に見えた。

思わずミネルアは笑った。


「笑う元気があるなら大丈夫だな。どこから来た?」


「パン屋さん」


「なんだパン屋か~、さっき見たな。すぐソコだし。行こう」


「うん!」



不思議だった。


初めて会うのに、初めて話すのに、とても心地いい存在に感じた。


「あ、やば」


「?」


急に立ち止まり、レシオンは誰かに見つかるまいと裏路地に入った。



「ちょっとだけ隠れてくれ」


「迷子なのに?」


「ああ・・まあ、ワザと迷子になったんだけど」


「え?」


「あ、なんでもない」



白い歯を見せて、いたずらそうに笑うレシオン。

その顔に一気にミネルアは絆され安心した。


「もう大丈夫、行こう」


と、路地からパン屋に向かう途中だった。


突然風を切る音がした。

シュッっと、かまいたちの様な音が。


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