双子の異世界・奇跡の花束
何も進まないまま、それから更に5年が経ち。

ミネルアは15歳になった。

すっかり女らしい体つきになったので、胸には常にさらしを巻いて潰す日々。

格好はヴォルスに言われた通り、ずっと男装していた。

幸い旅団には団長という過保護者がついているので団員達はミネルアに悪さをしようなど微塵も思う事はなかった。


「8年、か」


洗濯物を見つめながら呟いた。



_このまま、もう帰れないかも知れない・・



あの頃は帰りたくて毎日泣いていた。

旅団の団員たちは皆いい人達ばかりで居心地もいい。

それが救いだ。


ミネルアはここ数年で沢山本を読んできた。

小説やこの世界の歴史についてなど。手がかりになりそうなものは全部読み倒した。

誰かの空想に過ぎないものもあったが、誰もかれも異世界の人間は伝説の亜人とみなし

神にささげる存在だった。



_バレたら・・本当にそうなるの?



本を読むとゾクリと背筋が凍る時がある。


亜人は神の申し子。なんらかの力によりこの世界に落ちた存在。

だからこの世界の人間は亜人を神にお返しする為にその命を捧げるのだ。

つまり殺されるということ。


7歳のときに、ヴォルスが言わなかった真相はこれだと確信する。



「ミネルア?」


ビクッ


突然後ろから聞こえてきた声で体が震えあがった。


「あ、ヴォルス」


「なんだよ、そんなに怯えて」


「もう、後ろからはびっくりするよ」


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