悪役令嬢はお断りします!~二度目の人生なので、好きにさせてもらいます~

「あっ、そうだわ!」
 私は温度管理されたケーキ専用の冷蔵ボックスからケーキを出すと、プレートに盛る。
 本来ならばここまでなんだけれど、私はさらに追加して生クリームと黄色いマカロン、ミントを添えた。

 そして、溶かしたチョコレートが入ったコルネでマカロンに笑っている笑顔のマークを描き、今度はプレートに【お仕事がんばってくださいね!】というメッセージを添える。
 マイカ、元気になってくれるといいなぁ。
 私は銀のトレイにプレートをのせると、テーブル席へと運ぶ。

「お待たせいたしました」
 私がテーブルへケーキを置くと、マイカが身を起こしたんだけれど、瞳にはうっすらと涙が浮かんでいるのがうかがえた。

「ありがとうござ……えっ!?」
 マイカは、目の前にあるケーキを見て目を大きく見開くと、私の方へ顔を向けた。
 私は唇に人さし指をあて「内緒です」という仕草をすると、彼女は顔を輝かせて何度も首を縦に動かす。
 プレートを両手で優しく触れながら、マイカは目尻を下げてにっこり笑った。

「ありがとうございます! 夏期期間中に十大商会内で最高額を稼ぎ出して、またお店に戻ってきますね!」
「お待ちしております」
 私は微笑みながら言う。
 よかった。元気になってくれて。

 ゲーム内でもそうだけれど、マイカはやっぱり元気で明るいのが一番しっくりくるから──。




< 100 / 164 >

この作品をシェア

pagetop