悪役令嬢はお断りします!~二度目の人生なので、好きにさせてもらいます~
「あっ、そうだわ!」
私は温度管理されたケーキ専用の冷蔵ボックスからケーキを出すと、プレートに盛る。
本来ならばここまでなんだけれど、私はさらに追加して生クリームと黄色いマカロン、ミントを添えた。
そして、溶かしたチョコレートが入ったコルネでマカロンに笑っている笑顔のマークを描き、今度はプレートに【お仕事がんばってくださいね!】というメッセージを添える。
マイカ、元気になってくれるといいなぁ。
私は銀のトレイにプレートをのせると、テーブル席へと運ぶ。
「お待たせいたしました」
私がテーブルへケーキを置くと、マイカが身を起こしたんだけれど、瞳にはうっすらと涙が浮かんでいるのがうかがえた。
「ありがとうござ……えっ!?」
マイカは、目の前にあるケーキを見て目を大きく見開くと、私の方へ顔を向けた。
私は唇に人さし指をあて「内緒です」という仕草をすると、彼女は顔を輝かせて何度も首を縦に動かす。
プレートを両手で優しく触れながら、マイカは目尻を下げてにっこり笑った。
「ありがとうございます! 夏期期間中に十大商会内で最高額を稼ぎ出して、またお店に戻ってきますね!」
「お待ちしております」
私は微笑みながら言う。
よかった。元気になってくれて。
ゲーム内でもそうだけれど、マイカはやっぱり元気で明るいのが一番しっくりくるから──。