悪役令嬢はお断りします!~二度目の人生なので、好きにさせてもらいます~
「シルフィお嬢様。お加減いかがですか? ウォルガー様がお見舞いにいらっしゃいましたよ」
聞こえてきたのは女性の控えめな声だった。
シルフィお嬢様……ウォルガー様……どこかで聞いたことがある名前だなぁ……どこで聞いたんだっけ……?
顎に手を添えて思案すれば、すぐさま脳裏にひとりの美少女の姿が浮かんだ。
「シルフィってまさか!?」
答え合わせをするために、ベッドから飛び起きてそばにあった姿見を覗き込み、映し出された自分の姿を見て頭をかかえた。
「やっぱり、『ありあまる大金の力で恋愛攻略』に出てくる悪役令嬢、シルフィ・グロース!」
どうやら頭に浮かんだのは正解だったらしい。
鏡に映し出されているのは、ふっくらとした幼い輪郭を持つ少女の姿だった。
透き通るような肌に映える腰まで淡い桜色の髪は、私の動きに合わせてさらさらと揺れ動く。
小動物を思わせるつぶらな琥珀色の瞳は、極限まで見開かれている。
道でこんなかわいい子とすれ違ったら、絶対に見とれる自信がある。私だけじゃなくて、ほかの人も絶対にそうなると断言するくらいにかわいい。
年齢は十二歳くらいだろうか。
ゲーム内で幼少期の回想録に出てくるのが、ちょうどそのくらいの年齢だったはず。
誰かこの状況を説明してほしい。
どうして私は、あの伝説の乙女ゲーム『ありあまる大金の力で恋愛攻略』のキャラになっているのだろう?
しかも、悪役令嬢のシルフィ・グロース。
ゲーム内には攻略対象者が三人いて、それぞれに婚約者がいる。
彼女たちは嫉妬によってヒロインへ意地悪をする悪役令嬢に変貌する。
その悪役令嬢のひとりがシルフィだ。
『四大侯爵』と呼ばれる侯爵家の中でも群を抜いた名家のご令嬢で、攻略対象者のひとりであるウォルガーの婚約者。
生まれた時から決まっていた婚約だけれど、シルフィはウォルガーのことを愛していた。
それなのに、ヒロインのマイカが突然現れウォルガーと恋仲になったので激怒。学園内でマイカをいじめたり、夏休みに別荘で彼女を襲撃したり……。
それが最終的にはウォルガーの怒りを買い、シルフィは夜会で断罪され一家は没落。そして追放された。追放先の〝灰色の森〟で再起を図って逃走を試みるが、〝なにか〟に殺される。
ゲーム内では、なにに殺されるかまでは描写はないけれど。
「ありえない。だって、私は林原雫だよ。それなのに……」
私がそう声を荒らげた時だった。
頭の中にいろいろな情報があふれるように流れてきたのは。
映画を見ているかのように脳裏に映し出されていくそれは、シルフィとして過ごしていた数年の記憶だった。
そして、今十二歳だということも思い出す。
聞こえてきたのは女性の控えめな声だった。
シルフィお嬢様……ウォルガー様……どこかで聞いたことがある名前だなぁ……どこで聞いたんだっけ……?
顎に手を添えて思案すれば、すぐさま脳裏にひとりの美少女の姿が浮かんだ。
「シルフィってまさか!?」
答え合わせをするために、ベッドから飛び起きてそばにあった姿見を覗き込み、映し出された自分の姿を見て頭をかかえた。
「やっぱり、『ありあまる大金の力で恋愛攻略』に出てくる悪役令嬢、シルフィ・グロース!」
どうやら頭に浮かんだのは正解だったらしい。
鏡に映し出されているのは、ふっくらとした幼い輪郭を持つ少女の姿だった。
透き通るような肌に映える腰まで淡い桜色の髪は、私の動きに合わせてさらさらと揺れ動く。
小動物を思わせるつぶらな琥珀色の瞳は、極限まで見開かれている。
道でこんなかわいい子とすれ違ったら、絶対に見とれる自信がある。私だけじゃなくて、ほかの人も絶対にそうなると断言するくらいにかわいい。
年齢は十二歳くらいだろうか。
ゲーム内で幼少期の回想録に出てくるのが、ちょうどそのくらいの年齢だったはず。
誰かこの状況を説明してほしい。
どうして私は、あの伝説の乙女ゲーム『ありあまる大金の力で恋愛攻略』のキャラになっているのだろう?
しかも、悪役令嬢のシルフィ・グロース。
ゲーム内には攻略対象者が三人いて、それぞれに婚約者がいる。
彼女たちは嫉妬によってヒロインへ意地悪をする悪役令嬢に変貌する。
その悪役令嬢のひとりがシルフィだ。
『四大侯爵』と呼ばれる侯爵家の中でも群を抜いた名家のご令嬢で、攻略対象者のひとりであるウォルガーの婚約者。
生まれた時から決まっていた婚約だけれど、シルフィはウォルガーのことを愛していた。
それなのに、ヒロインのマイカが突然現れウォルガーと恋仲になったので激怒。学園内でマイカをいじめたり、夏休みに別荘で彼女を襲撃したり……。
それが最終的にはウォルガーの怒りを買い、シルフィは夜会で断罪され一家は没落。そして追放された。追放先の〝灰色の森〟で再起を図って逃走を試みるが、〝なにか〟に殺される。
ゲーム内では、なにに殺されるかまでは描写はないけれど。
「ありえない。だって、私は林原雫だよ。それなのに……」
私がそう声を荒らげた時だった。
頭の中にいろいろな情報があふれるように流れてきたのは。
映画を見ているかのように脳裏に映し出されていくそれは、シルフィとして過ごしていた数年の記憶だった。
そして、今十二歳だということも思い出す。