悪役令嬢はお断りします!~二度目の人生なので、好きにさせてもらいます~
「シルフィ様がエクレール様を階段から突き飛ばすはずがありませんわ」
「そうですよ、殿下。優しいシルフィ様がそんなことをするはずがありません」
「お前たちは現場を見ていたのか?」
「いえ……私たちはしゃべっていたので……気づいたらエクレール様が……ですが、シルフィ様が突き飛ばすはずがありませんわ」
「見てもいないのになにを勝手なことを。現にエクレールとティーナたちは突き飛ばされたと言っている。誰かほかに目撃者はいないか?」
殿下が辺りを見回しながら言うと、数人の生徒たちが手を上げだしたので、私は信じられない思いで立ちすくむ。
身じろぎができない。
「エオニオ様。私、シルフィ様が突き飛ばしたのを見ました」
「俺も……」
「私は突き飛ばしていません。そもそも両手が本で塞がれているのに、どうやって突き飛ばすんですか?」
反論したけれど、私の置かれている状況は変わらない。
むしろ、反抗していると捉えられたのか、殿下のまとっている空気がどんどん張りつめていった。
殿下はエクレール様をティーナたちに託すと、立ち上がって階段を上り私のもとへ。
「この期に及んでしらを切るつもりか。四大侯爵も落ちたな」
「私は無実です」
「意地でも認めないつもりか」
殿下が刃物を持っていたら確実に刺されていると感じるくらいに、その怒りが私に向けられているのをひしひしと感じる。
きっと、エクレール様のことを深く愛しているからだろう。私のことは、彼女に危害を加える悪い人間としてしか目に映っていない。
「なんて見苦しいんだろうな。エクレールは教科書を破られた時も、君をかばって黙っていたんだぞ」
「私は無実です」
「証人もいるのに往生際が悪い。即刻学園から出ていけ。この処罰は追って伝える」
殿下は腕を伸ばして私の手首を掴んで引っ張ったため、持っていた本が階段へと落ちた。