悪役令嬢はお断りします!~二度目の人生なので、好きにさせてもらいます~
「残念だな。王子様不在で」
「──っ」
「エクレールの前から消えるんだ。これ以上彼女を傷つけたら許さない」
殿下は私の腕を無理やり引っ張りなら階段を下りていく。
引きずられるようにして連れていかれているため、何度も階段を踏みはずしそうになるので一秒たりとも気が抜けない。
ここで転んで殿下を巻き込んだら、また妙な濡れ衣を着せられてしまう可能性がある。私は歯を食いしばりながら階段を下りると、殿下はそのまま廊下を真っすぐ進み、昇降口へ向かう。
そして校舎の外まで私を連れ出し、まるでゴミを放り投げるように腕を大きく振って私から手を離す。そのため、私は転がるようにして倒れ、地面に伏せた。
衝撃で膝や手に擦過傷を負ったようで肌がひりひりと痛い。
「二度とこの学園の敷居をまたげると思うな。屋敷で頭を冷やせ。厳重な処罰を下すからな」
殿下は吐き捨てるように言うと、私に背を向けて校舎の中へと消えていった。
「戻るのは無理ね……」
戻っても殿下は話を聞く耳を持ってくれないし、なにより私の精神がこれ以上持たない。
今の私ひとりではとても対処できないので、屋敷に戻ってお父様たちに相談した方がいいだろう。
馬車の迎えも頼んでいないため、私は自力で屋敷に戻ることにした。
幸いなことに屋敷まで徒歩で十分もかからない距離だ。