悪役令嬢はお断りします!~二度目の人生なので、好きにさせてもらいます~

 ──最悪な展開だ。

 じくじくと痛む傷よりも心の方がもっと痛い。
 なんでこんな目に遭わなければならないのだろうか。

 あまりにも唐突すぎて思考と感情が一致しないから涙すら出なかった。
 機械的に足を動かして屋敷までのルートを歩いていけば、見慣れた建物が目に入り視界が滲んでいく。

 ──帰ってきた。

 自分の屋敷を見てこんなにも安堵したことは人生で初めて。
 張りつめていた糸が切れたのか、私の瞳から涙があふれて止まらなくなる。

「お嬢様っ!?」
 門の掃除をしていた使用人のひとりが私に気づいたのを皮切りに、周りの使用人たちもこちらを見て目を大きく見開いた。
 私の姿を見てただごとではないと判断したらしく、屋敷へ向かって走っていく者やこちらに駆けてきてくれる者の姿が。

 ややあって、屋敷の扉が開き、お父様たちが飛び出してきた。家族の姿を目にし、私は安堵
て意識を失った。





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