悪役令嬢はお断りします!~二度目の人生なので、好きにさせてもらいます~
「あの子……」
華やいだ雰囲気の中、同年代くらいの子が視線を床に落とし浮かぬ顔で立っている。
耳が隠れるくらいまでの長さに切りそろえられた清潔感あふれる漆黒の髪に、海を思わせる綺麗な瞳。
一見女の子かなぁと思ったけれど、よく見ると男の子みたい。
とてもかわいらしい顔立ちをして、私よりも小柄。
瞳を揺らして体をぎゅっと縮め、今にも泣きだしてしまいそうな雰囲気に思わず庇護欲を誘われる。
見かけない子だ。
もしかして西大陸の子かな? 黒髪も青い瞳も西大陸では珍しくないって聞いたことがある。
「──シルフィ。いったい、なにを見ているんですか?」
凜とした声が頭上から降ってきたので顔を上げると、若草色のおかっぱの少年が立っていた。
「ラルフ!」
彼は黒縁めがね越しに、エメラルドをはめ込んだようなきらきらとした綺麗な瞳でこちらを凝視している。
ウォルガーと同様、ゲームの攻略対象者のひとり、ラルフレッド・ヴァイエだ。宰相の嫡男で、まだ少年ながら頭脳明晰で次期宰相と名高い。
私とウォルガーの幼なじみで、私たちはよく三人で遊んでいる。
「ちょうどよかったわ。ねぇ、あの子誰かわかる?」
私はラルフの肩を叩きながら、少年を視線で指す。
するとラルフは私の視線を追い、彼の姿を確認してから首をかしげる。
「いえ……見覚えがありませんね。彼がどうかしたのですか?」
「なんか寂しそうだなって。友達がいなくて不安なのかも」
「そうかもしれませんね」
「私、ちょっと声をかけてくるね! ひとりじゃ心細いと思うし」
「わかりました。なにかあれば知らせてください。僕も一緒に行ったら、二対一で怖がらせる可能性もありますし」
「うん! じゃあ、行ってくる」
私はラルフに断ると、さっそく窓際にいる彼のもとへ向かった。
ケーキを取ってくればよかったかな? あっ、でも好きなものがわからないから、後で一緒に取りにいけばいいか。
そんなことを考えながら彼に近づく。
彼は手を拳にしてぎゅっと握りしめ、うつむいているのでこちらに気づいていないみたい。
華やいだ雰囲気の中、同年代くらいの子が視線を床に落とし浮かぬ顔で立っている。
耳が隠れるくらいまでの長さに切りそろえられた清潔感あふれる漆黒の髪に、海を思わせる綺麗な瞳。
一見女の子かなぁと思ったけれど、よく見ると男の子みたい。
とてもかわいらしい顔立ちをして、私よりも小柄。
瞳を揺らして体をぎゅっと縮め、今にも泣きだしてしまいそうな雰囲気に思わず庇護欲を誘われる。
見かけない子だ。
もしかして西大陸の子かな? 黒髪も青い瞳も西大陸では珍しくないって聞いたことがある。
「──シルフィ。いったい、なにを見ているんですか?」
凜とした声が頭上から降ってきたので顔を上げると、若草色のおかっぱの少年が立っていた。
「ラルフ!」
彼は黒縁めがね越しに、エメラルドをはめ込んだようなきらきらとした綺麗な瞳でこちらを凝視している。
ウォルガーと同様、ゲームの攻略対象者のひとり、ラルフレッド・ヴァイエだ。宰相の嫡男で、まだ少年ながら頭脳明晰で次期宰相と名高い。
私とウォルガーの幼なじみで、私たちはよく三人で遊んでいる。
「ちょうどよかったわ。ねぇ、あの子誰かわかる?」
私はラルフの肩を叩きながら、少年を視線で指す。
するとラルフは私の視線を追い、彼の姿を確認してから首をかしげる。
「いえ……見覚えがありませんね。彼がどうかしたのですか?」
「なんか寂しそうだなって。友達がいなくて不安なのかも」
「そうかもしれませんね」
「私、ちょっと声をかけてくるね! ひとりじゃ心細いと思うし」
「わかりました。なにかあれば知らせてください。僕も一緒に行ったら、二対一で怖がらせる可能性もありますし」
「うん! じゃあ、行ってくる」
私はラルフに断ると、さっそく窓際にいる彼のもとへ向かった。
ケーキを取ってくればよかったかな? あっ、でも好きなものがわからないから、後で一緒に取りにいけばいいか。
そんなことを考えながら彼に近づく。
彼は手を拳にしてぎゅっと握りしめ、うつむいているのでこちらに気づいていないみたい。