悪役令嬢はお断りします!~二度目の人生なので、好きにさせてもらいます~
 彼は返事の代わりに、にっこり微笑んでそっと私を下ろした。

「えっ、どうしてここに? 手紙ではなにも言ってなかったじゃない。それより、再会できたってことは願いが叶ったってことだよね?」
「それは後で説明する。君が倒れるのを見て肝が冷えたよ。大丈夫か?」
 アイザックは私とエクレールの間に立った。

 幼少期は私よりも小さかったのに、今では私よりもはるかに背が高くなり、華奢だった体はたくましくなっている。
 最後に会ったのはアイザックの誕生日パーティー以来だから、四年ぶり? 

 あんなに小さくて泣き虫だったのに、今や誰もが振り返るであろうイケメンに成長しちゃって……と感慨に耽ると、
「お前たち、シルフィになにをした?」
 人を凍りつかせるほど冷たい声が響く。

 見上げると、声と同じくらい冷たい瞳でアイザックがエクレールを見据えた。

 これが本当にあのアイザック? 私の中の少年のアイザックと、どうしても結びつかない。

 彼の瞳に捉えられたエクレールたちは、体をぎゅっと縮こまらせて三人で抱き合い、オオカミに睨まれた子ウサギのようにわなないている。三人がこんなに怯えている姿を見るのは初めて。

「もう一度聞く。なにをした?」
「……っ!! ち、ちょっとぶつかっただけじゃないの。校章がブロンズのくせに!」
 エクレールは捨て台詞を残すと、立ち去っていった。
「アイザック、助けてくれてありがとう。それから──」
 私が腕を伸ばしてアイザックに抱きつくと、彼は「シルフィ!?」と裏返った声をあげる。







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