悪役令嬢はお断りします!~二度目の人生なので、好きにさせてもらいます~
「ねぇ、アイザック。いつ戻ってきたの? どこに住むの?」
 早口で質問すると、アイザックは喉で笑っている。
 
 久しぶりに会えたから、思わずテンションが上がってしまった。ちょっと恥ずかしくなってうつむく。
「今日の早朝に到着したんだよ。王都の郊外にある屋敷に住むことになっているんだ。父上が用意してくれた」
「お父様からの……?」
 親子関係は改善したのだろうか。

「あぁ。認められたんだ。父上からも周りからも。だから、許可が下りて今回の留学が叶った。卒業したら戻らなきゃならないけれど」
「そっか……戻っちゃうのね……」
 戻るのは寂しい。けれど――今度は幼少期と違って会うことができる。学園生活の四年間は一緒にいられるし。そう自分に言い聞かせて気を取り直した。

「クラス一緒だといいね」
 ゲームでは私とウォルガー、ラルフは全員別々のクラスだけれど、ゲームキャラではないアイザックはどのクラスなのかわからない。
「俺はシルフィと一緒のクラスだよ」
「そうなの? もしかして、もうクラス表を見たの?」
「いや、そう取り計らってくれたらしい。特別扱いはしないように言っているんだけれど」
〝特別扱い〟って……?
 
 そういえば、アイザックの家について詳しく聞いたことがない。校章はブロンズだけれど……。

「ねぇ、アイザック。アイザックの家って……」
 私が尋ねようとした時、「おーい」というウォルガーの声が届く。
 ふたりで視線を向けると、ラルフに肩を貸しているウォルガーの姿が見えた。
 心なしか、ラルフの顔色が悪いような気がする。

「アイザック。ラルフのことをお姫様だっこで運んでやって」
「冗談じゃありません!」
ラルフが慌てた声を上げる。 
「叫ぶ体力あったら大丈夫だな」
 ウォルガーが肩をすくめて言うと、いまいましそうにラルフはウォルガーを睨む。

 こうしてゲーム本編同様に私の学園生活は始まった。





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