悪役令嬢はお断りします!~二度目の人生なので、好きにさせてもらいます~
 マイヤーヌがメイドカフェで働いている光景が日常のものになった頃。
 私はアイザックと一緒に、講堂に向かって廊下を歩いていた。

 渡り廊下はそのまま小庭園へ行けるようなっているので、壁がない。
 そのため、時折吹く冷たい風が頬や髪をなでている。
 天気がいいので、渡り廊下でおしゃべりをしている生徒もちらほらいるみたい。

 ──あら?

 前方からマイカが歩いてくるのが見えた。
 手には教科書を持っているし、彼女の後方にも生徒たちがうかがえるので移動教室なのかも。

 マイカは私たちに気づいたようで、目が合うとパッと明るい表情になった。
 けれど、私の隣にいたアイザックを視界に入れ盛大に眉をひそめてしまう。

 本当に仲がいいのか、悪いのかわからないわ。
 ふたりはカフェでは口喧嘩しているけれど、学園内では話している場面すら目撃したことはない。

 学食で入学式の時に話をしているのを聞いたという以外に、ふたりに関しても噂はなかった。

 もしかして、なにか事情があるのかな?

 マイカたちが深々と頭を下げたので、彼女に続くように廊下にいた生徒たちが端によけて頭を下げていく。
 毎回思うけれど、よけなくても廊下は歩けるので大丈夫なんだけれどなぁ。
 個人的に江戸時代に大名行列が通る時に平伏する人々を思い出すので、ちょっと困惑している。

 人々の前を通っていくと、視界の端にキラリと星のように輝く物が入ってきた。

 今、なにか光ったような……?






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