悪役令嬢はお断りします!~二度目の人生なので、好きにさせてもらいます~

「お店は楽しいです。両親やほかの人たちの目を気にすることなくかわいい服も着られますし……」
「でしたら、辞めないでください。私はマイヤーヌとお仕事できて楽しいです。お客さんも同じですよ。きっと」
「そんな資格ありません……」
 マイヤーヌは、ぎゅっと両手を握りしめた。
 迷惑だなんて微塵も感じていないので、気にしないでほしい。
 私が勝手に動いてしまったのだから、負い目に思う必要はないし。
 けれど、やっぱり気にしちゃうよね。私も同じ立場なら気にする。どうしたらいいのかな……? あっ、そうだわ!

 私はあることが頭に浮かんだため、唇を開いた。

「でしたら、マイヤーヌ、こういうのはいかがですか? 今回の件で負い目を感じるとおっしゃるのでしたら、私のお願いを聞いてくれますか? それで貸し借りなしにしましょう」
「お願い……?」
「えぇ。私とお友達になってください。友達なら自分の友達が危機的な状況に陥っていたら助けます。私とマイヤーヌがお友達同士になれば、助けられたことに対して負い目を感じる必要はありません」
 私が手を差し出すと、彼女は目を大きく見開き一瞬固まった。

 マイヤーヌは手を伸ばして引っ込める動作を数回繰り返した後、神に祈るように手を組み深呼吸した。
 そして、こちらに向かって「ありがとう」と言いながら手を伸ばしてくれた。

 放課後。私はアイザックと共に城下町を訪れていた。
 城へと伸びている大通りの左右には、書店から宝飾店など様々な店が軒を連ねている。

 この辺りは主に高級品を扱う店々が立ち並んでいるため、貴族や富裕層に人気だ。
 顧客に合わせて店も落ち着いた印象を受ける外観なので、どちらかといえば華やかな印象を受ける店が多い。

「ねぇ、アイザック。マイカ、なにをプレゼントすれば喜んでくれるかな?」
「シルフィからのプレゼントならなんでも喜ぶよ」
 水を浴びた時、マイカが着替えを持ってきてくれたり、濡れたタオルを回収してくれたり、私たちのことを手助けしてくれた。
 いろいろご迷惑をかけたので、なにかちょっとしたお礼の品を探しにきたのだ。

 フラグ回避のためにあまり関わらないようにしようと思っていた。
 でも、彼女と接していくうちに心境にも変化が出てきたのだ。
 なんとなくだけれど、マイカは私のことを断罪しないって根拠のない自信がある。

「アイザックはなにがいい? 助けてくれたお礼にプレゼントするよ」
「いいよ、俺は。今、こうしてシルフィと一緒に買い物をすることができるだけで幸せだから。初めてだな。こうしてふたりだけで買い物に来るのは。ウォルガーたちも一緒なら何度かあるが」
「そういえば、そうかも」
「せっかくだから夕食を一緒に食べていかないか? ウォルガーとこの間食べにいった店がうまかったんだ」
「行きたいわ」
 返事をすると、アイザックが顔を緩めた。
 そんなアイザックの笑顔を見ていると、なんだかこっちまでうれしくなる。
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