悪役令嬢はお断りします!~二度目の人生なので、好きにさせてもらいます~
(エクレール視点)

 ラバーチェ家のシンボルとも言われている大庭園での、優雅なティータイム中だった。

 私は咲き誇る花々をお茶のお供に、アイアンテーブルの上にのせられているイチゴのタルトと味わい深い紅茶を楽しんでいる。

 私の視界の端に映るのは、神話の神々が彫られている噴水。
 ここを中心として大運河から引かれた水が庭園を通る水路に広がっていく。
 水路の周辺にはブルーサルビアなどの花類だけではなく、柑橘系の木々も植えられていた。

 ラバーチェ家の庭園は、世界でも屈指の庭師によりつくり上げられた最高峰の庭園。
 この庭の一番の見所は、その場から眺めることではない。

 屋敷の二階から眺めると庭師の意図が理解できる。
 上から見ると、ラバーチェ家の紋章が浮かんで見えるように仕掛けられているのだ。

 庭園に関してどこの貴族にも負けない。
 ミニム王国の貴族の中では一番と自負している。

 ラバーチェ家が四大侯爵の地位を剥奪される前の頃。
 当時、広大な庭園を持ち、それに私財を投じることが、貴族たちの富と権力の象徴だった。

 先祖が屋敷と共に残した唯一の当時の面影。
 四大侯爵時代の残骸。
 そんなふうに裏で揶揄する貴族もいる。

 どうせ、そいつらの庭なんてたいしたことはない。
 大庭園を持ったこともない負け惜しみの戯れ言だ。
 それに、近々侯爵の称号を授与され四大侯爵に返り咲く──。
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