悪役令嬢はお断りします!~二度目の人生なので、好きにさせてもらいます~
「あぁ、早く夏休みにならないかしら?」
胸が踊る。
夏になれば、シルフィは毎夏恒例のウォルガー様の別荘を訪問する。
隣国との境目にある田舎の別荘地。
人口の少ない所ならば、人目を気にすることなく動きやすい。
ましてや別荘までの一本道は木々が壁となり隠してくれているのでますます都合がいい。
奇襲してくださいと言っているかのような、絶好の地だ。
別荘地なので治安もいいから油断していそうだし。
目障りなシルフィに早くこの世界から消えてほしい。
あの子が持っているものすべて、本来ならば私のものだった。
公爵令嬢という地位も天使と呼ばれ慕われる名誉も。
先祖が四大侯爵の地位をグロース家に奪われたせいで……。
シルフィを消したら、今度はグロース家の没落を狙う。
そして、今度こそ返してもらう。四大侯爵の地位を。
「あぁ、楽しみ。早く夏休みがこないかしら?」
イチゴにフォークを刺すと、真っ赤な果汁がじわっと実を伝って、真っ白いプレートにあふれ出した。