その手をぎゅっと掴めたら。

放課後はいつものようにファーストフードで塾までの間、くだらない話をして過ごす。

もちろん今日の話題は、私の嘘告白についてだ。


「モテ王子、暑さでどうかしてたんじゃない?」

「真奈がしつこそうだから、早く帰りたくて適当に言ったんじゃないの?」

「あー、それあるー」


凛ちゃんと早紀ちゃんが、悪びた様子もなく本人の前で意見を交わす。雪ちゃんもメイクを直しながら、相槌を打っている。


「でも真奈、罰ゲームで告白したってことはモテ王子に言っちゃダメだよ?私たちを巻き込まないでよ」


綺麗に飾り付けされたパフェを崩さないよう器用にスプーンで掬う凛ちゃんは少しきつめの口調で忠告してきた。


「分かってる」


3人の前で話す時におどおどする癖はなくなったけれど、自分の意見を言えない点は相変わらず。

初めてできた友達を大切にしたいから。


「分かってるならいいけど。で、明日はどうする?」

「え?」

「こっちからアクション起こしたほうが、楽しいじゃん」


「……」


正直に言えば、罰ゲームは終わったものだと思っていた。明日、登校して葉山くんにきちんと謝って終わらせるつもりだった。
でも罰ゲームのことを明かせないとなると、私はひとりで嘘告白をした最低な女になる。もちろん嘘告白という行為自体が最低だけれど、言い訳くらいはさせて欲しい。

また胃の痛みが増してきた。

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