その手をぎゅっと掴めたら。
1時間後、私と葉山くんのお皿は空っぽになった。最後まで無理して食べているようには見えなかったため、コーヒーはブラックだけれど、甘いものは得意らしい。ーー無理してないと思う、たぶん。
おじいちゃんも言ってたっけ。
素材の味を消さないために、砂糖やミルクは控えた方が本来の味わいが楽しめるって。
少し安心したところで、次は問題の会計になる。
当たり前のように葉山くんは伝票をカウンターに持って行ってしまった。
人気なカフェだけあって値段もそれなりにして、高校生にとってはプチ贅沢だ。
「葉山くん、自分の分は払うよ」
店員がお釣りを用意している間に、お札を差し出す。
「お弁当作ってくれたでしょ。ここは俺が払うことが妥当じゃない?それにいずれ俺が、君を養うことになるんだから、そう毎回気にしてたら身がもたなくない?」
「は?え…?養うって…」
「俺はそのつもりだから。勝手に賭けとか、罰ゲームとか、俺の気持ちを無視したことはしないで」
それはつまり結婚?夫婦になる?
そう捉えていいのだろうか。
言葉の代わりにこくこくと頷いた私はなにも考えられないままお札を財布に戻した。